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おちばのとなり
落葉の隣り
山本 周五郎
「小説新潮」1959(昭和34)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,877 字 · 57 页
それをよく覚えておくように、などと、いっぱしおとなぶった口ぶりで、だが心からしんけんに、繁次は繰り返し注意したものであった。
このあいだずっと、休みの日にはたいてい参吉が訪ねて来た。そしていっしょに芝居や寄席や、季節によっては菊見、舟遊び、遊山などにもでかけた。横山町の店はやかましいとのことで、いつも参吉のほうから来るのだが、するとおひさのようすが目立って変った。参吉はそれまでどおり、一と言か二た言話しかける程度だが、おひさは顔を赤らめ、返辞もろくにはできず、うるんだような眼で、気づかれないようにそっと見あげたりする。そのくせ参吉のいるあいだはそわそわとおちつかず、へまなことをして朋輩の女中に叱られる、といったようなことを繰り返した。
――まだ十三や十四で、いやだよこの子は、もういろけづいちゃったんじゃないの。
今年になってから、口の悪いおつねという女中にずけずけとそう云われ、おひさは泣きだしたことがあった。
「いま始まったことじゃねえ」繁次は持った盃をみつめながら、独りでそっと呟いた、「おひさは昔から参吉が好きだった、それでいいじゃねえか、おい繁、てめえやきもちをやいてるのか」