轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

むし

虫

江戸川 乱歩

一~四「改造 第十一卷第六號 六月號」改造社、1929(昭和4)年6月1日<br>五~十二「改造 第十一卷第七號 七月號」改造社、1929(昭和4)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,053 字 · 86 页

青空文庫

目をふさぐと、まぶたの裏の暗闇の中に、彼女の様々な姿が、大写しになって、悩ましくも蠢くのだ。小学時代の、天女の様に清純な笑顔にダブッて、半裸体のサロメの嬌笑が浮き出すかと思うと、金色の乳覆いで蓋をした、サロメの雄大な胸が、波の様に息吐いたり、靨のはいったたくましい二の腕が、まぶた一杯に蛇の踊りを踊ったり、それらの、おさえつける様な、凶暴な姿態に混って、大柄な和服姿の彼女が、張り切った縮緬の膝をすりよせて、じっと上目に見つめながら、彼の話を聞いている、いとしい姿が、色々な角度で、身体のあらゆる隅々が大写しになって、彼の心をかき乱すのであった。考えることも、読むことも、書くことも、全く不可能であった。薄暗い部屋の隅に立っている、木彫りの菩薩像さえが、ややともすれば、悩ましい聯想の種となった。

ある晩、あまりに堪え難かったので、彼は思い切って、兼ねて考えていたことを、実行して見る気になった。陰獣の癖に、彼は少しばかりお洒落だったので、いつも外出する時はそうしていたのだが、その晩も、婆やに風呂を焚かせ、身だしなみをして、洋服に着かえると、吾妻橋の袂から自動車を傭って、その時芙蓉の出勤していた、S劇場へと向ったのである。