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じゃせいのしゅうねん
蛇性の執念
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,981 字 · 38 页
文夫さんは取り敢えず叔父様を自分の書斎に連れて行きました。ごたごたしていたので文夫さんの姿の見えないのを、誰一人として気がつくものはありませんでした。書斎は広い建物の外れに作ってありまして、別棟のようになって居りますからまことに静かで、殊にその日はひっそりとして近くに誰も居ませんでした」
「何故また文夫さんはそんな淋しいお書斎へ叔父様をお通しなすったのでしょうか知ら?」
「そこですわ。皆さんも不思議に思うんですけれど、私が考えますのに、叔父様は南洋をながい間うろつき廻っていた人ですから、どこやら容子も違っていたでしょうし、第一あの顔の疵は人相を随分悪く見せますからね。文夫さんは最初暴力団か何かと間違えたのじゃないかと思うんですの、それでなるべくお客さん達の目につかないように、自分で始末をつける積りで、故意と人のいない書斎を撰んだものだろうと思いますのよ」
「文夫さんは叔父様のお顔もご存じなかったのでございますか?」
「忘れてしまってたんでしょう。だから叔父様は例の写真を持参して、それを証拠に、自分は、先代御木井男爵の弟で、落魄している叔父だということを告げて、若干の合力を頼んだのだそうです。