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じゃせいのしゅうねん

蛇性の執念

大倉 燁子

「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,981 字 · 38 页

青空文庫

それ以上の考えは断じてなかったと強弁していますよ」

「ではどうして殺す気になったんでしょう?」

「最初はそんな気もなかったんでしょうが――何しろ叔父様という人は執念深くって、御木井家の事なら何事によらず、一から十まで探って知っていたのです。無論武雄さんの失恋したのも聞き知っていました。文夫さんの方ではまた何も知らないで、ほんとの叔父様だと思うものですから、気をゆるしていろいろ打ち解けて話していたそうですの、そのうちにふと叔父様の頭に、二十何年前の自分と同じ境遇に泣いているだろう処の武雄さんの姿が浮びましたんですって、その日も今日のように盛んな披露会が、しかもこの同じ邸内で行われたんだそうですの。喜びに満ちたあの晴れやかな、恋の勝利に輝く兄の顔は今だに忘れようとしても忘れられない。それに引き換えて自分の惨めさはどうだったろう。ああ武雄は可哀想だ! と思うと眼の前の文夫さんが急に憎くなり出して、遂いに殺意を生じたのだといいますが、それは少し怪しいと思います、文夫さんの方では叔父様の心が変ったのも知らずに、懐そうに写真に見入って、『叔父様もこの頃はお若かったんですね、そのお写真は言葉にお甘えして頂いておきます』