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おやどりことり

親鳥子鳥

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页

青空文庫

「お友達ですか?」

「いいえ、中央美眼院。眼科よ」

「ああ、彼処ですか?」

「御存知?」

「ええ」

「何うして?」

と絹子さんは詰め寄って来た。

「友達の姉さんが彼処で手術を受けたんです」

「何うでしたの、結果は?」

「それがいけなかったんです」

「まあ、何んな風?」

「さあ、つまり……」

僕は詰まってしまった。元来嘘だから、何んな風も斯んな風もない。

「一皮目が二皮目になりませんでしたの?」

と幸い絹子さんの方から手掛りを提供してくれた。

「なったんです。片一方丈け」

「片一方は駄目?」

「ええ。片一方は以前の通り一重目縁です。でもその方が宜いんですよ。二重目縁になった方は寝ていても薄目を開いているんですって」

「まあ、気味の悪いこと」

「矢張りあれはいけないものですね」

と結論に漕ぎつけて、僕は相応嘘が吐けるのに意を強くした。斯ういう風に一個人を相手にすれば虚言だけれど、一般公衆を相手にすれば想像力の発揚になる。小説家志望者は能く観察すると共に、社会を向うへ廻して真面目な嘘を吐くことを学ばなければならない。

電車に乗った時、絹子さんが、

「美眼術も矢張り詐偽師でしょうか?」

と訊いたのは僕の嘘がお父さんのと諸共効を奏した証拠だった。