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おやどりことり

親鳥子鳥

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页

青空文庫

と促されて、浩二が玄関の障子を明け放つ。

「鬼はあ外と!」

と軍隊で鍛えた胴間声が喧しく響き渡った刹那、曇り硝子の格子外でドサリという物音がして、ブルが唸った。

「何でしょう?」

とお母さんが訝った。

「鬼か知ら?」

と浩二が提燈を翳した時、格子が開いて、

「僕ですよ。ああ、吃驚した」

と言って入って来たのは四谷の芳夫さんだった。

「福はあ内! 福はあ内!」

とお祖父さんは、早速気転を利かして、芳夫さんに豆を浴せかけた。これで嫁の里の長男を鬼扱いにしたという譏は受けない。

「さあ、早くお上りなさいよ」

とお母さんが請じた。

「格子へ手をかけようとした時、突拍子もない大声がしたものだから、尻餅をついたんですよ。そこへブルが飛んで来て顔を甞めたんです」

と芳夫さんはズボンの埃を叩いたり、額を拭いたりした。

それからお祖父さんは方々撒き廻って、最後に二階の座敷で、

「さあ、皆拾うんだよ」

とお三方を持って身構えた。僕達は皆腹這いになって待っている。

「僕も拾います」

と芳夫さんも仲間に入った。

「私も」

と絹子さんがその隣りに坐った。次いで、

「鬼はあ外! 福はあ内!」

と豆に交ってチョコレートやキャラメルがバラバラ降り始めた。