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おやどりことり

親鳥子鳥

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页

青空文庫

すると絹子さんは発条仕掛けのように伸び上ったが、

「……に能く似た若い人で、社の方ですよ」

と後を附け足したら、安心したように以前の姿勢に戻った。

或日絹子さんは僕の勉強部屋へ来て話し込んでいる中に、受験準備の書物を※って見ながら、

「こんなに沢山読むんじゃ源太郎さんも大変ね」

と慰問してくれた。

「真実に厭やになってしまいますよ」

「けれどもあなたなんか秀才だから大丈夫よ。始終一番でしょう?」

「学校の成績なんか当てになりませんよ」

と僕は謙遜したが、絹子さんは、

「矢っ張り一番や二番は実力があるんですから、保証つきですわ」

と言ってくれないで、

「あの芳夫さんも秀才でございましょうね?」

と尋ねた。元来僕の勉強に同情したのでなくて、問題を四谷へ持って行きたかったのである。

「然うですね。あれぐらいなら先ず秀才の方でしょうね」

と僕はお父さんの鑑定通りを紹介した。

「銀行をおやめになったんだそうですね?」

「ええ。やめることは名人ですよ。三越も二月か三月でやめました」

「まあ、三越へ勤めていらっしゃいましたの?」

「ええ。しかし越後屋の長松どんじゃ満足しないんです」

「ホホ、面白い源太郎さんね」