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おやどりことり

親鳥子鳥

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页

青空文庫

と子供達が笑い出す。

「何と言っても斯うやって首を振っていれば直ぐに帰って行く。そうして二度とは来ない。先方も実は忙しいんだからね」

「オホホホホ。今度試めして見ましょうか? お蔦、お前一つやって御覧よ」

とお母さんが言った。苟くも奥さんが狂人の真似は出来ない。

「あら、奥さま、私、迚も出来ませんわ、そんな器量の悪い顔は」

とお蔦は昨今は相応垢抜けたから、ナカナカもって任じている。

さて、昨日は僕が学校から帰って来ると、浩二が待ち構えていて、

「兄さん、今日はお母さんのところへ女の西洋人が来たよ」

と注進した通り、夕御飯の折、お母さんは、

「あなた、今日は私の昔の先生でスミスさんという方がお見えになりましたのよ」

と女学生時代懐かしく、いつもよりは若々しい声を出した。尤も未だ必ずしもお婆さんではない。三十八とも言うけれど、兎に角四十未満だから、子供は五人あっても決して年寄がらない。

「ふうむ、それは宜かったね」

とお父さんは箸を取りながら応じた。

「スミスさんてアメリカの方でございますよ。私十何年ぶりかで英語を話しましたの」

とお母さんはイソイソとしている。