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おやどりことり

親鳥子鳥

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页

青空文庫

「それは然うだけれど、僕はもう文ちゃんと呼んでも返辞をしないよ。子供らしくて外聞が悪い」

「片山君」

「何だい?」

「明日一緒に教科書を買いに行こう」

「大内君、然うしましょう」

「ハッハハハハ」

「ハッハハハハ」

と笑って、文ちゃんと源ちゃんはそのままお廃止になった。

あの時分は愉快だった。大難関を突破して後は平々坦々の積りでいた。尤も入学試験前には相応苦労したものである。課外で毎日晩くまで引っ張られた。家へ帰っても算術の自習書と睨みっこで、寝ても鶴と亀の脚の夢を見た。高等学校の入学試験準備に没頭している昨今は兎角昔を思い出す。矢張り課外が一週に二回ある。その上に英語と数学を習いに行く。帰り途で日の暮れることが度々ある。実に忙しい。

「片山君、一つ息抜きに活動でも見に行こうじゃないか?」

と僕が発起しても、

「然うさね」

と文一君は煮え切らない。

「矢っ張りよそう。その間に幾何でもやる方が宜い」

と僕も実利に就く。

「大内君、出かけようか、久しぶりで?」

と文一君が言い出す時は、

「さあ」

と僕が二の足を踏む。

「厭やかい?」

「行っても宜い」

「大変大変。宿題が残っている」