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おやどりことり
親鳥子鳥
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页
「大丈夫とも。本人も薄々承知で地理を研究している。僕だって尋常一年の時お父さんに須田町で置いてきぼりを食わされたぜ。僕のところの子供は東京中なら何処へ放り出しても平気で帰って来る」
と文一君は澄ましていた。
お隣りで斯ういう緊張した家庭教育を施しているのだから、家のお母さんがお父さんの放任主義に苦情を申立てるのも無理はない。お母さんは高等学校の入学試験には文一君が合格して僕が落第するものと確信している。実際、文一君が僕のところへ来ると寛ぐように、僕は文一君の家へ上ると一種の圧迫を感じる。自分は努力が足らないと思う。それで文一君の勉強部屋を訪れるのは好い刺戟になる。
さて一昨日の晩その文一君の勉強部屋で共々数学に脂汗を絞っていると、お客に来ていたお婿さんがヌッと入って来た。僕は早速かしこまって一礼した。お辞儀もここの門をくぐると緊張して真正の余所行きになる。
「巣鴨の兄さんです」
と文一君が紹介するまでもなく、僕は文科大学の助教授と承知していた。
「何うです?」
と助教授は会釈した。
「駄目ですよ」
と文一君は僕まで代表してくれた。
そのまま話が途切れて手持ち無沙汰が少時続いた後、