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かいせつ しゅみをつうじてのせんせい

解説 趣味を通じての先生

額田 六福

「舞台 岡本綺堂追悼号」1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,362 字 · 11 页

青空文庫

烏瓜もすきだったが、地味に合わぬとみえて目黒の山にはなく、私の処から数回球根を運んだが、遂に実がならずにしまった。

それ等の庭の花や、又到来の花なぞ、すべて自分で活けられた。別に何流を習われたと云う事もきかなかったが、自然の風格があった。

*

生き物は概して好きでなかった。鳥も犬も飼われていなかった。尤も、旅行先の湯の宿で、たまさか縁側へ来た犬を愛撫されていたのは時折見た。それが、揃いも揃って田舎の駄犬であったのも先生らしい。

「飼うならキリギリスをお飼いなさい。あいつは江戸っ子でさあ。」

半七老人がそう云っている。鈴虫も蛍もいた。ある人の書いた評伝の中に、「蟻を殺されなかった」とあるが、その事は私はききもらした。が総じて、こうした小さい、果敢いものは好きだった。

その中では、蛙が一番好きだった。雨蛙でもよし、蟇でもよし、おそらく先生のペットの中で、これが一番だったと思う。麹町の元園町時代は、市街の中央だったが、それでもお城のお濠が近く、番町の大溝が近かったりした関係上、折々その庭に蛙が来た。目黒の新邸は、名に負う西郷山の山つづきなので、蟇がよく出た。