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ろんごものがたり

論語物語

下村 湖人

「現代」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,688 字 · 266 页

青空文庫

」

と訊くと、子賎は、

「私は人を使うが君は自分の力を使う。だから骨ばかり折れるのだ。」

と答えた。この答が世間の評判になり、孔子の耳にも入った。孔子は子賎が若いに似ず、よく徳を以て治め、無為にして化しているのを知って、心から喜んだのである。

しかし、子貢にして見ると、自分の前で若造の子賎が、そんな風に讃められるのは、あまりいい気持ではなかった。彼はそれを自分に対する皮肉のようにも聞いたのである。

(自分は、もう四十の坂を越してかなりになるのに、まだ一度も孔子にそんな風な讃め方をされたことがない。どちらかというと、くさされる方が多かったくらいだ。)

彼はそう思って、暗い気持になった。そして、若い頃からの孔子との応対が、つぎつぎに思い出された。

いつの頃だったか、彼が孔子に、

「1自分が人にされて嫌な事なら、自分も亦、人に対して、したくないものです。」

というと、孔子は言下に、

「それはまだまだお前に出来ることではない。」

と貶しつけてしまった。彼はその時のことを思うと、今でも顔から火が出るような気がするのである。

また、ある時、孔子は彼に対して、

「2お前は学問の上で顔回に勝てる自信があるか。