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まけないおとこ

負けない男

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页

青空文庫

「まあ!」

「そんな物の頼み方があるかって、先方も酔っているんです。そんな奴等に頼むものかって、先生は決して負けている人じゃありません」

「それじゃ纒りっこありませんわ。あら、あなた」

「何ですか?」

「お頭に何かついていますよ」

と道子さんが寄り進んだ。髪の毛にかゝっていたものを摘み取って、

「蜘蛛の巣よ」

と指先で揉んだ。

「近道をしようと思って、木の下を潜り抜けたからでしょう。兎に角、吉報ですから、急いだんです。先生は大分酔っていました。その実業家連中との議論を長々と話すんでしょう? 頼む人と喧嘩をしたんじゃ迚も駄目です。僕、もう諦めていたんですが、捨てる神あれば拾う神ありでした。矢張り先生の同窓で○○新聞の編輯長をしている人が先生の味方について、然ういう男なら我輩が使いこなして見せるから是非寄越せと言い出したんです」

「それは宜うございましたわね。あなたは新聞の方が向くかも知れませんわ」

「僕も然う思うんです。明日行って見ることになっています。先生から紹介の名刺を戴いて参りました」

と堀尾君が内隠しを探った時、女中が上って来た。

「もう晩いから、これ丈けで宜いのよ。