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まけないおとこ

負けない男

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页

青空文庫

「今日も能く寝た。あゝあ」

「矢っ張り学校があって忙しい方が宜いようだね」

「いや、そんなことはない」

「ハッハ。一寸真剣味を見せた」

「学校はもう御免だ。この間勘定して見たら、十八年やっている」

「兎に角、一段落さ」

「重荷を下した所為か、手持ち無沙汰でいけない」

「しかし例年ならいよ/\暑中休暇ってところだからね。先ずこんなものだろうよ」

「然うさ。これで魚釣でも出来ると宜いんだけれど」

「道子さんが休暇になれば、直ぐじゃないか?」

「それまで毎日この通り空々寂々さ」

「君は帰りっきりに帰るのかい?」

と堀尾君はこれが苦になる。暑中休暇中は諦めているが、奥田君が帰京しないと、秋から道子さんに会うことが出来ない。

「さあ」

「財産の番人かい?」

「番をするほどないんだから、半端で困っている」

「それじゃ帰って来るかい?」

「さあ」

「相変らず煮え切らないんだね」

「何かするとすれば、郷里じゃ駄目だ。銀行の頭取が月給八十円だもの」

「僕の方はまだひどい。新聞の主筆が六十円ぐらいだそうだ」

「郷里にいついたんじゃ一生を葬るようなものだよ」

「僕は郷里は最初から問題にしていない」

「君は自由が利くから宜いけれど、僕は親父の意向がある」