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まけないおとこ
負けない男
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页
「大先輩がやっちょる、やっちょる」
と芳野君が冷かした。
「何うだい? 僕の忠告は」
「結構だね」
「三人で大いにやろうじゃないか?」
「素より。社の為めだ」
「いや、一晩飲んで胸襟を開くんだよ」
と大先輩は別に画策するところがあった。
「それも宜かろう」
と芳野君は穏かに賛成した。
「堀尾君、何うだね?」
「いつでもお供します」
「話せるよ、これは」
と三輪君は喜んだ。
「堀尾君の隅に置けないことが今初めて分ったのかい?」
と芳野君が言った。
「然うさ。この通り謹厳で宴会さえ迷惑がっている」
「それは表向きさ」
「え?」
「僕はもう拝見している」
「何を?」
「堀尾君」
「何ですか?」
「何でいと来給えよ」
「ハッハヽヽ」
と堀尾君は少し思い当る節があった。
「君は独身だって言ったけれど、嘘をついたね」
「独身ですよ」
「しかしこの間の晩、奥さんらしい女性と二人で銀座を歩いていたぜ」
「参ったなあ、これは」
「もうあるんだろう?」
「いや、これからです」
「真直に申立て給え」
「目下婚約中で、年末に式を挙げます」
「此方で参ってしまう。ハッハヽヽ」
と芳野君は打ち興じた。
「これは後輩じゃない」
「立派な先輩だよ。