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まけないおとこ

負けない男

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页

青空文庫

お婿さん同志もお嫁さん同志も同窓で、片一方が片一方の仲人役を勤めることになっている。

堀尾君は毎日曜に道子さんを訪れる。外に何かに託けて臨時が必ず一回入る。道子さんも無論待っている。或晩、矢張りその臨時で社の帰りに寄った時、堀尾君は、

「道子さん、感心なものでしょう」

と自慢した。

「何が?」

「あなたの御忠告に従って、入社以来喧嘩口論てものを一切致しません」

「当り前ですわ。そんなこと」

「おや/\」

「未だ一月と少しじゃありませんか?」

「それにしても上成績でしょう」

「さあ」

「褒めて戴く価値は充分あります」

「油断なさるから駄目よ」

「いや。大丈夫です。編輯長は荒いのが揃っていると言いましたが、あれは驚かしでした。皆好い人達ばかりです。上の連中だって、会社のように威張っていません。それに仕事が面白いです。今度は続きますから、御安心下さい」

「心配なんかしませんわ」

と道子さんは甚だ冷淡だった。

「変ですね、少し」

「はあ?」

「憤っていらっしゃるんですか」

「いゝえ」

「頭痛でもなさるんですか?」

「いゝえ」

「それじゃ矢っ張り憤っていらっしゃるんでしょう?」

「覚えがおあり?」