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まけないおとこ
負けない男
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页
と出ていた。劈頭第一だったから、直ぐ目についた。堀尾君は、
「覿面だな」
と思って、擽ったいような心持がした。しかし次に学生の帰省が六七名麗々しく並んでいたので、
「相変らずだな」
と微笑んだ。田舎の新聞は目の細い網だ。時には中学生まで掬い上げる。
△陸軍大尉篠崎一造氏 病気にて途中下車、駅前小花屋に投宿加養中。
△加茂村助役須藤儀右衛門氏 令息の結婚にて昨日東上。
△三井物産会社員岩崎悌四郎氏 関西出張帰東の途次昨夜馬橋村へ帰省。
「おや/\、悌四郎君が来ているのか?」
と堀尾君は覚えず呟いた。
「早いね」
とそこへ、兄さんの玉男さんが現れた。
「お早う」
と堀尾君は新聞を手から放した。
「草臥れたろう? 晩くまで話して」
「いや、一向」
「彼方へお出。ソロ/\御飯の支度が出来る」
と玉男さんは迎いに来たのだった。
「久しぶりで帰って来ると、田舎も悪くない」
と正晴君は立って庭を眺めた。堀尾家は村一番のお大尽だ。好い庭を持っている。
「悪くて何うするだ?」
とその惣領の玉男さんは徹頭徹尾田舎に満足している。
「松が一本枯れかゝっているね?」
「何れ?」
「あれさ」
「成程」
「始終見ていると気がつかないんだね」