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まけないおとこ

負けない男

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页

青空文庫

「参ったね。ハッハヽヽ」

「上役で思い出したが、君、もう一つ相談があった」

「何だい?」

「犬を一疋貰ってくれないか?」

「さあ」

「五疋生れたんだ。君は嫌いかい?」

「好きだよ」

「今度は下宿と違って、一軒構えるんだから用心の為めに一疋飼う方が宜いぜ」

「ナカ/\勧誘が巧いね」

「方々から申込があるんだけれど、魚屋や薪屋にはやりたくないってんだ」

「上役がかい?」

「うむ」

「何方の上役だい?」

「両方さ」

「告白したね」

と堀尾君は満足した。

「何うだい? 貰ってくれるかい? 今のうちなら択り取りだ」

「よし、一番好いのを貰おう」

「有難い」

「牝じゃ駄目だよ」

「うむ。何なら見に来て定め給え。何とかの雑種だといったよ。実によく近所の魚を銜えて来る」

「えゝ?」

「ハッハヽヽ。夫婦二人暮しなら、魚を買う必要はないかも知れない」

「大変な奴だね。ハッハヽヽ」

「それは冗談だけれど、ナカ/\悧巧な犬だよ」

「その中に見に行く」

「明日の晩来ないか?」

「会社の帰りに廻ろうか?」

「占め/\!」

「何だい?」

「妻が誰か招待したいと言うんだ」

「誰かとは?」

「さあ、一寸魂胆があるんだ」

「利用されるんじゃ詰まらない」