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あしがるほうこう

足軽奉公

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1945(昭和20)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,949 字 · 28 页

青空文庫

老人はそれを作るのがいかにも楽しそうで、どんな高価な物を作っているかと疑えるほど一つ一つに念をいれ、仕上ってからも暫くはためつすがめつ眺めているという風だった。……まわりの者がなにか云いかけると、おちついた柔和な調子で言葉短に答えるが、自分の身の上ばなしをしたり、進んで雑談のなかまに加わるようなことはなかった。

藤六はこの老人に心を惹かれた。継ぎはぎの当った布子を着て、髪毛も灰色になり、痩せた小さなからだつきで、見たところなんのとりえもない実に平凡な人柄である。けれどもよく注意してみると、いつも静かに微笑を湛えている眼や、柔和な言葉つきや、ちょっとした身振りのなかに、なんともいえない枯れた味があって、どうかすると蝉脱した老僧のような感じをさえ与えるのだった。……汀はさすがに部屋から出なかったが、藤六は炉端へ出て人々の話を聴きながら、いつも眼はその老人の挙措に見いっていたのである。そうした或夜のこと、たいてい話したいことも話し尽して、ふと言葉が途切れたとき、古蚊帳買いだという中年の、庄さくと呼ばれる男が、

「爺さんはいつも不平がなさそうだな」

と問いかけた。