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てんき

転機

伊藤 野枝

「文明批判 第一巻第一号、第二号」1918(大正7)年1月、2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,656 字 · 67 页

青空文庫

一番正直な人が一番最後まで苦しむことになっているのでしょう? それを考えると、私は何よりも可愛想で仕方がないんです。」

「可愛想は可愛想でも、そんなのは何にも解らない馬鹿なんだ。自分で生きてゆくことのできない人間なんだ。どんなに正直でもなんでも、自分で自分を死地におとしていながらどこまでも他人の同情にすがることを考えているようなものは卑劣だよ。僕はそんなものに向って同情する気にはとてもなれない。」

私は黙った。しかし頭の中では一時にいいたいことがいっぱいになった。いろいろTのいったことに対しての理屈が後から後からと湧き上がってきた。Tはなお続けていった。

「お前はまださっきのMさんの興奮に引っぱり込まれたままでいる。だから本当に冷静に考えることができないのだよ。明日になってもう一ど考えてごらん。きっと、もっと別の考え方ができるに違いない。お前が今考えているように、みんながいくら決心したからといって、決して死んでしまうようなことはないよ。そういうことがあるものか。よしみんなが溺れようとしたって、きっと救い出されるよ。そして結局は無事にどこかへ、おさまってしまうんだ。