轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

てんき

転機

伊藤 野枝

「文明批判 第一巻第一号、第二号」1918(大正7)年1月、2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,656 字 · 67 页

青空文庫

私はとうとう懐から紙を出して、よほど乾いてきた泥をふいて草履をはいた。二人はやっとそれで元気を取返して歩き出した。

日暮れ近い、この人里遠い道には、私達の後になり先になりして尾いてくる男が一人いるだけで、他には人の影らしいものもない。空はだんだんに低く垂れてきて、いつか遠くの方は、ぼっと霞んでしまっている。遠く行く手の、古河の町のあたりかと思われる一叢の木立の黒ずんだ蔭から、濃い煙の立ち昇っているのが、やっと見える。風はだんだんに冷たくなって道の傍の篠竹の葉のすれ合う音が、私達の下駄の音と、もつれあってさびしい。二人はS家の様子や主人の話など取りとめもなく話しながら歩いた。

「あの主人は大分しっかりした人らしいのね。だけど後から来たおじいさんは、本当に意気地のない様子をしていたじゃありませんか。」

「ああ、もうあんなになっちゃ駄目だね。もっとももう長い間ああした生活をしてきているのだし、意気地のなくなるのも無理はないが――あそこの主人みたいなのは残っている連中の内でも少ないんだろう。皆、もう大抵はあのじいさん見たいのばかりなんだよ、きっと。残っているといっても、他へ行っちゃ食えないから、仕方なしにああしているんだからな。