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うんめいのままに

運命のままに

豊島 与志雄

「黒潮 第壹卷第貳号」太陽通信社、1916(大正5)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,406 字 · 57 页

青空文庫

そして私は英子と相対している沈黙のうちに息づまるような気がした。

英子もそれを苦しんでいたに違いない。彼女はよくお茶を差上げるからと云っては私を母の所へ導いて行った。

春子さんは何時も私をやさしくいたわってくれた。身体に注意しなければいけないなどとよく親切に云ってくれた。私は彼女の前に出ると何時も慈母の前に在るがような気持ちを覚ゆるのであった。

「この頃お国のお母さんは御丈夫でいらっしゃいますか。大分暫く御無沙汰ばかり致して居りますが。」

「ええ相変らず病身ですが、床につくほどのことはありませんでしょう。」

「それはいけませんですね。あなたも時々お帰りになって上げた方がお宜しいでしょう。」

「ですが何やかや忙しいものですから。」

「そうでございましょうね。でもお若いうちに勉強なさるのが一番お宜しいですよ。私共の信夫みたようではほんとうに困ってしまいます。それでも此の節あなたはお身体も余りよくって被居らないようですから、お気をつけなさらないとね。」

「身体の方はどうも留守になり勝ちなものですから。」

「ええどうしてもお若いうちはそうなんでございましょうね。」

私は春子さんからそんなことを云われると、彼女の前にひれ伏したくなるのであった。