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うんめいのままに

運命のままに

豊島 与志雄

「黒潮 第壹卷第貳号」太陽通信社、1916(大正5)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,406 字 · 57 页

青空文庫

眉から眼のあたりに少し高慢ちきなニュアンスがあったが、肥った頬の下に妙に引き緊った口元には才智の閃きが見られた。いつもハイカラなローマに結って、鼇甲の簪を一つ※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)していた。それが彼女の細い頸の上に重そうに見えた。彼女は物を正面に見ないで、少し斜に見つめる癖があった。

彼女が女学校を出ると間もなく、私はある私立大学を卒業してぶらぶら遊んでいた。その後の半年余りが私達の楽しい恋の時期であった。然し私はそれらのことについては、これ以上もう何にも云うまい。云うのは心苦しいが故ではない。不必要だからである。

私は自分の運命と彼女の運命とを一つにして考えていた、そしてそれを英子にも強いた。たといまだ私達には結婚ということが少しも問題になってはいなかったにせよ……。そして私達は幸福であった。

英子の室には本箱が一つと、その側にオリーブの羅紗を掛けた机とがあった。いつもその上には種々な貝殼を鏤めた筆立が置いてあって、鵞ペンでない只の美しい鳥の羽が四五本※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)っていた。