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つげびと
野菊の墓
伊藤 左千夫
伊藤左千夫『野菊の墓』。同一底本的分册已合并为一书。收入:告げ人、箸、老獣医。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,955 字 · 71 页
夜遊びといえばなにほどいってもやめない。朝は五へんも六ぺんもおこされる。学校の成績がわるいのもあたりまえのことだ。十五になったら十六になったらと思ってみてれば、年をとるほどわるくなる。おかあさんを見ろ、きさまのことを心配してあのとおりやせてるわ。もうそのくらいの年になったらば、両親の苦心もすこしはわかりそうなものだ」
「おかあさんはもとからやせてら……」
母はこのぞんざいな芳輔のことばを聞くやいなやひいと声をたてて泣きふした。父も顔青ざめて言句がでない。
「おとうさん、わたしすこし用がありますから錦町までいってきます」
そういって芳輔は立ちかける。なにごとにも思いきったことのできない糟谷も、あまりに無神経な芳輔のものいいにかっとのぼせてしまった。
「この野郎ふざけた野郎だ……」
猛然立ちあがった糟谷はわが子を足もとへ引き倒し、ところきらわずげんこつを打ちおろした。芳輔はほとんど他人とけんかするごとき語気と態度で反抗した。手足をわなわなさして見ておったかれの母は、力のこもった決心のある声をひそめて、あなた殺してしまいなさい。殺してしまいなさい。罪はわたしがしょいます。