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つげびと
野菊の墓
伊藤 左千夫
伊藤左千夫『野菊の墓』。同一底本的分册已合并为一书。收入:告げ人、箸、老獣医。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,955 字 · 71 页
とかく無理な希望を持ってると、自分のすることにも無理ができるから、無理とくるしみを求めるようになるなどと話されて、細君もひたすら西田の好意に感じて胸が開いた。
あかしのつくころに糟谷は帰ってきた。西田は帰ってしまうにしのびないで、泊まって話しすることにする。夜になって礼子や下女の笑い声ももれた。細君もおきて酒肴の用意に手伝った。
糟谷は飲めない口で西田の相手をしながら、いまいってきた某氏の家の惨状を語った。
ひとりむすこに嫁をとって、孫がひとりできたら嫁は死んだ。まもなくむすこも病気になった。ちょうどきょう某博士というのがきた。病気は胃癌だといわれて、家じゅう泣きの涙でいた。牛のほうはぞうさないけれど、むすこは助かる見込みがない。おふくろが前掛けで涙をふきながら茶をだしたが、どこにもよいことばかりはないと、しみじみ糟谷は嘆息した。
西田はあいさつのしようがなく、
「ぼくのような友人があるのをしあわせと思ってるさ」
と投げだすようにいう。
「ほんとにそうでございます」
と細君はいかにもことばに力を入れていった。芳輔は、十時ごろに台所からあがってこっそり自分のへやへはいった。