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はちのき
鉢の木
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1944(昭和19)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,534 字 · 28 页
とき妹に付け文をされた、こちらの状態と付け文ということがあまりにかけ離れすぎていて、無作法というよりも侮辱感のほうがさきにきた。もっと直截にいえば、数十日このかた鬱々と絶望に沈んでいた気持が、堰を切った濁流のようにどっとその一点へ集注したともいえよう、自分でも制しようのない怒気に拳を震わせながら、かれは黄昏の道をずんずんとあるいていった。……佐伯の屋敷は丘ひとつ越した川上村の中央にある、日はようやく落ちて、夕靄のおぼろな田川では蛙の声がしきりだった、松林の間の小径をゆき当ると石段があり、登りつめたところが屋敷の表門だった、かれはくぐり門をはいり、榁木の前栽をまわって玄関へ立った。「佐伯又左衛門どの御意を得よう」屋敷じゅうに響くような声でかれは叫んだ、二どめに答えるこえがして、若い家僕があらわれた、「又左衛門どのに会いたい、壱式四郎兵衛がまいったと案内たのむ」「いかなる御用でございますか、わたくしが取次ぎを仕りましょう」家僕の眼はあきらかに軽侮の色をみせていた、それがさらに四郎兵衛の怒りをかきたてた、「取次ぎではわからぬ主人を呼べ」