轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

はちのき

鉢の木

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1944(昭和19)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,534 字 · 28 页

青空文庫

三

そう云いながらふり返ったとき、厨のほうへゆく妹の袂から、はらりとなにか落ちるのをみつけた。

三

萩尾なにか落ちたぞ、そう云おうとしてふと四郎兵衛は口をつぐんだ、妹の袂からこぼれ落ちたのは封じ文だったから、……ながいあいだ帰参の知らせを唯一のたのみとしていたかれには、文というだけで胸を突かれる思いがする、口まで出かかった声を抑え、妹が厨へ去るのを待ちかねてすばやく拾いあげた。みると表には「萩尾どの」とあり、裏には「佐」という字だけが小さく記してあった、そしてその一字は投げられた匕首のように、いきなり四郎兵衛の心をぐざと刺した、文を持つかれの手が震え、鬢のあたりが蒼くなった。

「萩尾これへまいれ……」坐り直してかれはそう呼んだ、萩尾は濡れた手を拭いてすぐに来た。そこへ坐れと云われて不審そうに兄を見ながら座につくと、その眼をひたと見まもりつつ四郎兵衛が云った、「おまえ今日どこへまいった」「酒波寺のお納所へ縫物をお届けにまいりました」「そのほかに立寄ったところはないか」「はい……」「では途中で誰かに会いでもしたか」そう云われると萩尾は眩しげに眼をしば叩きながら俯向いた、「はい……帰る