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ながさきのかね
長崎の鐘
永井 隆
「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页
これには弱った。はじめは眼のあたりに怪我しているのだから、眼底付近に出血でもしたのかなと思ったが、目玉を動かしてみると動く。眼が見えなくなったのではないと決まったら、はじめて慄然とした。すっかりこの建物が倒壊して生き埋めになったにちがいない。生き埋めとはまた張り合いのない、だらしない死に方を与えられたものだ。とにかくできるだけやってみようと、物の破片の底でごそりもそりと命がけのもがきを続ける。しかし、せんべい焼きにはさまれたせんべいのように、かくもびっしゃり圧しひしゃがれていると、身体のどこを支点にどう動こうかと考えることもできない。顔もうっかり動かされない、そこら一面硝子破片のペーパーだ。その上真っ暗闇で、自分の上にどんな物がどんなふうに平衡を保って乗っているのやらわからない。ちょっと右肩を動かしたら、なんだか知らぬが、がらがらと崩れ落ちた。私は「おーい、おーい」と呼んでみた。その声は、まったくわれながら情けない響きを闇の中へ伝えていった。
隣のレントゲン撮影室には橋本看護婦がいた。運よく図書棚の間にいたので、かすり傷ひとつ負わなかった。万物が魔法によって生物となったかのように、がらがらとものすごく跳ね回る恐ろしい時間は、壁によりそってじっと隠れているうちに、十秒二十秒と経過して、あたり一面埃と土煙と