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ながさきのかね
長崎の鐘
永井 隆
「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页
火の中から看護婦二人を救い出し、炎をくぐって無我夢中でここまで駆けつけたという。あとは皮膚科、外科のレントゲン技手の崎田君と金子君だけだ。
「器械はあと回し。人間を救い出そう」
私はこう決めた。二人ずつ組になって燃える病棟の中から患者を担ぎだすのである。小笹君と森内君は崎田と金子を捜しに火炎の中へ入っていった。長老が梅津君を背負って裏山へ登ってゆく。まるで日露戦争の絵のようだ。私たちが再び入ってゆく建物からは、ようやく物の下敷きから抜け出した人々が、まったく命からがらといったふうで、目の色を変えて走り出してくる。言葉をかけても返事もせず、ふり返りもしない。おそらくは無我夢中なのだろう。大学病院から離れて一体どこで誰に診てもらうつもりなのか。私は一人一人に「あわてるな」と声を浴びせかけた。地下室の手術場へ入ってみると、水道管が破裂して大洪水だ。隣の衛生材料置場に入ってみてさらに暗然となった。担架すらばらばらにちぎれ飛んでいる。手術器械はそこら一面にばらまかれ、水薬と粉薬と注射液と、いずれも容器が壊れて内容が入りまじり、その上に惜しげもなく水道管から水をふり注いでいる。