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ながさきのかね

長崎の鐘

永井 隆

「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页

青空文庫

核分割だ。マイトナー女史が見つけた、あの現象だ」

「マイトナー女史、あまり聞いたことのない名だなあ、どこ人だ?」

「オーストリア人だ。研究したのはコペンハーゲンでだ。やっぱりヒトラーから追われた学者の一人だ。ハン博士の助手だったが、今は六十歳をよほど越したお婆さんのはずだ。伊国のフェルミ教授の仕事に関連しているのだがね。ウラニウムの原子核に遅く飛ぶ中性子を当てると、ウラニウム原子がぽっかり二つに割れるのを見いだしたんだ。あまり速い中性子だと、原子核を単に貫通してしまってなんにもならないのだ。のっそり飛んできた中性子が原子核の中へもぐり込むと、もごもごしていて、突然核が二つに割れて離れる。そして核内に潜在していた巨大な原子力が解放されて噴出する」

「ほう。便利だねえ、中性子がありさえすりゃいいじゃないか」

「この時おもしろいことは、二つに割れた部分の質量が元の質量より減っているという事実なんだ。これはもう以前にアインシュタインが発表したエネルギーと質量の同等性という理論を事実において証明したもので、物理学の革命とも称すべき、科学界における最近の最も重大な開拓であったわけなんだね。