轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

いんじゅう

陰獣

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1928(昭和3)年8月増刊~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,968 字 · 131 页

青空文庫

そして、私はそれに極めたのだ。だが慌てることはない。私はいつも急がないのだ。第一、この手紙を読んだお前が、充分苦しみ抜かぬ内に、その次の手段を実行するというのは、余りに勿体ないことだからな。

三月十六日深夜復讐鬼より

静子殿

この残忍酷薄を極めた文言を読むと、私は流石にゾッとしないではいられなかった。そして、人でなし大江春泥を憎む心が幾倍するのを感じた。だが、私が恐れを為してしまったのでは、あのいじらしく打しおれた静子を誰が慰めるのだ。私は強いて平気を装いながら、この脅迫状が小説家の妄想に過ぎないことを、繰返し説く外はなかった。

「どうか、先生、もっと御静かにおっしゃって下さいまし」

私が熱心に口説き立てるのを聞こうともせず、静子は何か外のことに気をとられている風で、時々じっと一つ所を見つめて、耳をすます様な仕草をした。そして、さも、誰かが立聞きでもしているかの様に声をひそめるのだった。彼女の唇は、青白い顔色と見分けられぬ程色を失っていた。

「先生、わたくし、頭がどうかしたのではないかと思いますわ。でも、あんなことが、本当だったのでしょうか」

静子は気でも違ったのではないかと疑われる調子で、囁き声で、訳の分らぬことを口走るのだ。