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ようきなきゃく
陽気な客
山本 周五郎
「苦楽」苦楽社、1949(昭和24)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,086 字 · 46 页
……彼女はもとわりとすれば中くらいの花柳界にいたということだ。軍曹か曹長あたりの未亡人でもあるらしい。五六年かあるいはもうちょっとまえに現在の喫茶店を開業し、そこにはそこにあるような女給を置いてけたたましく儲けたもんだという。……まあかなりな貯金が出来たわけなんだが、そこへちょび髭社長があらわれた。……おれとすればこんな下劣な話はしたくない。が……ちょび髭社長はそのちょび髭と各種の秘密文書とを巧みに活用し、ついに貪欲と無恥と酷薄のかたまりであるそのヒステリイ女をろうらくしたわけさ。
「貴女のような類のない婦人が、こんな低級な営業をしていらっしゃるのは自分としては心外に耐えない、実にそれは貴女ご自身にとっても一般社会にとっても軽くない損失であります」
こんなことも云ったもんだろう。
「ひとつ自分と協力して文化的であり高級的であり、しかもぼろい事業である所の、雑誌社を経営なすってはどうでありますか、そうなれば斯業経営についての犬馬の労は云うまでもなく、自分はこの肉躰も精神もあげて貴女のために忠誠をつくすでありましょう」
こういうようなことも云ったんだろう、いや慥かに云ったらしい証拠には。