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ようきなきゃく

陽気な客

山本 周五郎

「苦楽」苦楽社、1949(昭和24)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,086 字 · 46 页

青空文庫

「ああ男は哀しい、男は救われることがない」

天青はこうも云ったさ。

「ちょび髭は初めにあの鬼女をたらしこんだ、彼はあの鬼女を雁字搦めにし、絞れるだけ絞った、彼自身そう思ったし、まわりの者もそう認めた、ところがまったく逆だったんだ、雁字搦みに縛られたのは彼自身なんだ、絞るだけ絞られているのも彼自身なんだ、……あの鬼女の貯金帳はいま元の十倍以上にもなってる、おまけに、あいつは近いうち花隈へ酒場を出すそうだが、それを知っているのは今のところこの天青ひとりだろう、……社長はなんにも知らない、彼は今すっからかんだ、不動産や貯金はもとより誌名登録まであの女の名儀になってる、……剥かれたのは彼のほうさ、彼のほうがちょろまかされたんだ、あの下賤な狐づらの女悪魔め、……だがきみ、なあきみ」

天青は両手でおれの肩へ凭れかかった。

「これはあのちょび髭だけじゃないんだぜ、多かれ少なかれ男はみんな同じなんだ、昔も、今も、これからもさ、……男はみんな女どもによって燔祭にあげられる小羊なんだぜ」

おれは空腹のときみたように下腹からすっと力がぬけてゆくのを感じたと思う。やるせないじゃないか、きみ、……なんというからくりだ、もしこの世がそんなに手のこんだものだとするなら、いっそ海へでもとびこんだほうがいいようにも思われる。