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あめあがる

雨あがる

山本 周五郎

「サンデー毎日涼風特別号」毎日新聞社、1951(昭和26)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,794 字 · 43 页

青空文庫

明くる日は同宿者のうちから三人出立していった。タガ直しの源さんの女房は、背負った子供を揺りあげしながら、「もうお眼にかかれませんわねえ、どうかお二人ともお大事になすって下さいましよ、御出世をなさるようにお祈り申しておりますからねえ、ほんとにいろいろと御親切にして頂いて、お世話さまでございましたよう」

こう云って袖口で涙を拭いた。

「みなさんが定って、もうお眼にかかれないと仰しゃるのね」おたよがあとで云った、「――これまでも定ったようにそう仰しゃいましたわ、どうしてまたいつか会いたいと仰しゃらないのでしょうか」

伊兵衛はさあねと云って、うろたえたように眼をそらした。

――あの人たちには今日しかない、自分自身の明日のことがわからない、今いっしょにいることは信じられるが、また会えるという望みは、もつことができないのである。

それは旅を渡るかれらに限ったことではない、人間はすべて、……こんなふうなしめっぽい感想がうかんだからであった。

夕方になると新たな客が五人来た。中に猿廻しがいて、夕食のあとで猿に芸をさせてみせ、自分でも諸国の珍しい鄙唄などうたった。