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ゆき
雪
中谷 宇吉郎
「雪」1938(昭和13)年 11月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,536 字 · 152 页
鉄道の雪による損害というものは、一年にどの位あるか。この数字は、前記一億二、三千万円という中からは除いてあることを記した。我々は冬になると新聞に、「裏日本一帯の吹雪、各列車立往生、ラッセル車出動」などの文字を度々見るのである。表日本に晴天が続き、のどかな気分で朝の新聞を手にする都会人には、これらの記事は何か自分に縁のない遠いところのことのように思われるのであるが、鉄道省にとっては年毎にやられる雪の猛威は恐るべきものであって、数字に現れる損害も一年百万円から二百万円の多額にのぼっている。人々は新聞記事によって、ラッセル車が出動すれば、忽ち雪ははね飛ばされ、汽車は悠々と雪原を通っているように想像し勝ちであるが、事実はなかなかそう簡単なことではない。除雪車を救援のための除雪車が出されることも珍しくはない。ここにも科学者が根本的に解決に乗り出すべき沢山の問題が蔵されているのである。率直に言えば、まず第一に鉄道省の人々の真面目な考慮がなくてはならないと思われる。何万円という多額の金を出して、アメリカの最新式除雪車を購い入れ、日本へ持って来た時、或る場合にはそれが「立往生」