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ゆき

雪

中谷 宇吉郎

「雪」1938(昭和13)年 11月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,536 字 · 152 页

青空文庫

これより以前に雪に関する記述は全く残っていない。古代文化の繁栄の中心は多く地中海方面であって、この地方に雪の降ることは甚だ稀であったから、随って雪の研究は北欧人により、あるいは北方に旅行をした人によって漸次為されたものと考えられる。

「第1図」のキャプション付きの図

第1図

一五五〇年代ウプサラの大僧正オラウス・マグヌスはその著 Historia de Gentibus septentrionalibus の中の一章に雪のことを記し、第1図の如き雪の結晶を描写した。これは今から見ればまことに怪しげなものといわねばならぬが、ともかくこれが雪華図として世界最初のものである。彼はこのほか窓硝子に出来る窓霜(ジャック・フロスト)についても記述しているし、スカンジナヴィア人が狩猟や戦争の用具として現今のスキーの如きものを用いていることも記載しているのである。

マグヌスは結晶に種々の形のあることを発見したが、それが一様に六方晶系に属する結晶であるということには気が付かなかった。その点を初めて指摘したのは有名なケプレルだということになっている。その後一六三五年アムステルダムにおいて、デカルトが雪の結晶の観察をしてその絵を発表したのを初として、十七世紀の前半には多くの学者が雪の結晶に興味を持ってその研究をした。