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ゆき
雪
中谷 宇吉郎
「雪」1938(昭和13)年 11月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,536 字 · 152 页
空が青いということは、空気が青いのではなく、空気はもとより無色透明のものである。空から来る光は、日光の中の青い光が空気の分子や空気中に浮んでいるこの種の細塵に散乱されて、青い光となって人間の眼に入るのである。もともと日光の中には赤も黄も緑も即ち虹の七色があって、これらの色は光の波長のちがいから生じているのである。即ち色々の波長の光の集りである。日光が空気の分子や細塵に当って散乱される時に、その波長がこの空気の分子や細塵よりも更に小さい光だけがよく散乱されるのであって、波長の長いものは、これらの微小固体があっても、それでは散乱されずにどんどん通ってしまうのである。それは丁度川や湖などで色々の波が岸へ寄せて来る場合に、岸から少し離れたところに碇を下ろしている船があるとすると、小波は舟に遮られて反射されてしまうが、大波は船にあたってもかまわずに通り越して岸に寄せてくるのと似たような現象なのである。即ち空を仰いでいる人間の眼に入って来る光は、空気の分子や細塵のために散乱された波長の短い青色の光が多いために青く見えるのである。
古来青空の美しさは多くの詩歌にも歌われ、人々の心持を爽けく、晴々と豊かにするものであるが、その青空が空気中の塵のために出来るということは、面白いことであろう。