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ゆき

雪

中谷 宇吉郎

「雪」1938(昭和13)年 11月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,536 字 · 152 页

青空文庫

外では鋭い風の音がしている。部屋の中でストーブに暖って話しているうちに、ふと立って廊下に出て見ると、何処から吹き込んだかわからぬように一面に真白に、水晶の粉のような雪がまかれる。かなり建てつけがよくなっていると思われるような硝子戸の隙からもこの種の粉雪は平気で舞い込むのである。博物館の陳列箱の中には、どのようにしっかりした箱にして置いても、永い年月の間には埃が溜って困るものである。その埃が目に見えぬ位の隙間から侵入する理由は、温度の時間的変化によって、箱の内部の空気が膨脹収縮するためによるものであるという研究があるそうである。粉雪の場合にもこれと同じようなことがある。雪の場合では室内の空気が暖って天井に逃げるために、この種の粉雪の侵入を促進しているものと思われる。この種のものは外観上はうどん粉位の粉に見えるのであるが、その顕微鏡写真をとって見ると、非常に小さい角柱状の結晶の集合から成っている場合が多い。その一例を第6図(第3図版)に示す。

雪の結晶の二大別として、平板状と角柱状とが挙げられる。角柱状のものは全部六角の柱になっていて、顕微鏡下では、丁度水晶の結晶のような外観を示すものであるが、この種の粉雪の場合は、角柱が全体として非常に小さいばかりでなく、その脊が低いために横から見ると四角形に見えるような