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ゆき
雪
中谷 宇吉郎
「雪」1938(昭和13)年 11月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,536 字 · 152 页
これを一回の観測と算えて、こういう観測を五分乃至十分置きに繰り返した。もっとも余り身体が冷え込んで来ると、室内に逃げ帰ってストーブで身体を暖めてまた出かけるのである。そんな時には二十分間位観測が抜けることがあるが、それ位のことは仕方がない。
観測は札幌と十勝岳とで行い、降雪日数五十四日、全観測回数九百七十四回に及んだ。その結果を整理して見てはっきりと分ったことであるが、殆どすべての降雪は各種の結晶の混合から成っているのである。時には例えば六花状の結晶ばかりが降るように見えることがあっても、暫く続けて観測している中に他の種類のものが雑って来、また次の種類のものが降り始めるという工合になることが多い。ただ一種の結晶のみがずっと降るというようなことは一度もなかった。針状などの比較的珍らしい結晶が一分間か二分間位さっと降って、直ぐ他の種類の結晶になってしまうようなことも時々あった。
こういう現象は、上空の気象状態が非常に複雑だということを示すのである。即ち上空の各層の気象状態がそれぞれ異り、各※(二の字点、1-2-22)の層で別の形の結晶が出来、地表に近い所で出来た結晶はそのままに近い形で地上に達し、上層で出来たものは落下途中で更に色々な成長をなして地上に達する。