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ゆきのうえのしも

雪の上の霜

山本 周五郎

「面白倶楽部」光文社、1952(昭和27)年3月~4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,586 字 · 50 页

青空文庫

「はあはあ」彼は独りで頷いた、「この方たちが馬へ乗って、その駄賃を払わないというんですか、まさかそんな、いやそんなばかなことが、それは冗談ですよ」

「いやそのとおりだ、払わないんだ」

年長の青年がそう云った。際立った良い服装からも、その態度の驕慢さからも、これが五人の中の音頭とりであり、相当な身分の者だということは察しがつく。彼は抜いていた刀を鞘におさめながら、

「われわれは馬子を相手に、冗談を云うほど、暇つぶしに困っているわけではない、こやつらが不埒なことを申すから、街道の諸人のために」

「ええそれは聞いていました」伊兵衛はおじきをした、「――酒手を呉れということですが、あれはそれほどお怒りになることじゃないんです、御存じないでしょうけれども、かれらはみんな貧しいんです、馬も建場から借りている者が多いし、そうでなくとも駄賃の中から幾割かは建場へ納めなければなりません、おまけに乗って貰うには安く云うのがかれらの習慣ですから、じっさいの収入は心付なり酒手だ、ということになるわけなんです」

「そんなことはわれわれは知らない、また旅客の知ったことでもないだろう」