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ゆきのうえのしも

雪の上の霜

山本 周五郎

「面白倶楽部」光文社、1952(昭和27)年3月~4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,586 字 · 50 页

青空文庫

「はあ、それは、少しも知りませんでしたが、しかし、どうしてそんなことをなすったのですか」

「理由は二つあります」青岳の渋い顔が少しゆるんだ、「――まず第一に、あのときの岩野久馬は次席家老の子で、ほかに老職格の家の者が二人いました、かれらのしたことは悪かったが、血気ざかりの若者たちだから、ときに羽目を外して暴れることもある、しかも相手は街道の人足で、いつぞやは貴方に対しても難題を吹きかけ、衆を頼んで乱暴をはたらいた」

「いやあれは、あれは私にも落度がありましたので、私はかれらにあやまったのです」

「だが私が制止しなければ、あの騒ぎはもっと大きくなったでしょう」青岳は頭を振った、「――岩野ら五人のばあいはもっと単純なことです、貴方は黙って通りすぎればよかった、人足どもの面前で、侍五人を取って押えることはなかった、あれは貴方のやり過ぎです」

「私は、私は、そうは思いません」

「では今からでもいい、そう思って下さい」青岳は押えつけるように云った、「私が五人に了解を求めた理由の第二は、貴方と家中の者とを、気まずい関係にしたくなかった、なぜなら、……よい折だから申上げるが、私は貴方に、この道場の後継者になって貰いたい、と思っているのです、御存じだろうが、藩侯が御在国のときは、お手直しに城中へあがる、その役も、しぜんいつかは貴方