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ゆきのうえのしも
雪の上の霜
山本 周五郎
「面白倶楽部」光文社、1952(昭和27)年3月~4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,586 字 · 50 页
それはおたよもいってみればわかると思うんだが、じつに気の毒で哀れで、なんです、どうして笑うんです」
「仰しゃればよろしいのに、賭け試合をなすったのでしょう」
「つまり、その、つまるところ、そうなんです」彼は赤くなり、気まずそうに笑った、「念流の道場をやっている、津村九郎兵衛という者がいるんです、そこへいって少しばかり強引に申込みました、承知しそうもなかったが、ちょっと怒らせましてね、ふしぎなことに道場のあるじなんて者は、怒らせると賭け試合をやるんですよ、ええ、それはふしぎなくらいです」
「小室さまはお受取りになりまして」
「受取らないというので置いて来ました、食費や世話になった代もありますからね、婿にならない以上、そういうものも払わないと義理が悪いでしょう」
「婿にならないって、なんのことですの」
「なんのことって、千草というお嬢さんを私の、いや私をその、……ええと、ああ茶店がある」伊兵衛はなにやら慌てて、向うを指さした、「――ちょっと休みませんか、少し早いが午の弁当をついでに」
「いいえ、今のお話をうかがいますわ」おたよは首を振って、屹と良人の顔を見た、「その千草とか仰しゃる方は、小室さまのお嬢さまなのですね、そしてあなたがその方の、お婿さまになるというわけなのですか」