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ゆきやなぎ

雪柳

泉 鏡花

「中央公論 第五十二年第十三號」1937(昭和12)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,054 字 · 90 页

青空文庫

が、何の、これでは済まさない、一つ風並が直りさえすれば、大連か、上海か、香港、新嘉坡あたりへ大船で一艘、積出すつもりだ、と五十を越したろう、間淵が言います。この「大船で一艘積出す、」というのが若い時からその男の癖だった。話の中に、一人娘は、七八ツの時から、赤坂の芸妓家へ預けてある、といったのも、そういえば記憶がある。

――亡くなった、という電話だが、あとさきの様子から待合に縁がありそうに思われる。

その節、取りまぎれて、折返しとは行かなかったけれども、二月とはおかず、間淵の侘住居を訪ねたが、もうどこかへ引越しした。行くさきさえ、その辺で聞いても分らなかった、という始末なのですから。

(電話は聞きながしにしておこう。)

(義理の悪いことはないんですか。)

(言うにゃ及ぶべき。)

晩酌で、陶然として、そのまま肱枕でうたたねという、のんきさではありません。急ぎの仕事に少し疲れていた時であったのです。

ところがどうです、その翌日、まだ朝のうち、玄関で早口に饒舌っている女の声がして、すぐに取次のいうのを聞くと、年をとっては気ぜわしい、堪え情がなくなって訪ねて来た。