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ゆきやなぎ
雪柳
泉 鏡花
「中央公論 第五十二年第十三號」1937(昭和12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,054 字 · 90 页
」
「ほっけです。」
「堅法華、それで頑固や。」
「いや、いやそんな事より、なくなった母親の遺言です、灸は……」
「その癖、すえられなさる様な事が沢山あるやろ、は、は、は。これでも昔は島田髷や。」
と口を開けて、それでも皮肉ではなさそうに笑った。
「時に、洞斎さんは、何の病気で。」
と聞くと、
「中気でに、四年越。」
私も、何も、皮肉でいったのではなかった、気違も、癩さえ治すというのに対して。――しかし四年越、中気でなくなった事をいってからは、おかしく、急に陰気になって、帰支度をする。蒸しものの菓子を紙に包んで、ちょっと頂いた処は慇懃で却って恐縮。納めた袋の緒を占めるのが兜を取ったようで、厳に居直って、正午頃までに、見舞う約束が一軒。さて、とる年だし、思い立った時に逢って見たいのを、逢って見ぬと、いつまたお目にかかれようと、それゆえにこそ、といって起った時には、すこしばかり妙な寂しい気がしたのです。
人情ですか、争えない、それもあります。それに、自動車でなくっては運ばれない。嵩張った手土産がありました。
「義理さえ欠けなければ。」
とあとでいう家内の言については、使で礼を返しても、その義理は欠けなかったが――逢って見たい時に逢っておかぬと、いつまたお目に掛れるか――まだ仕事場へ帰らない――送出して取って返し、吸いかけ