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ゆきやなぎ
雪柳
泉 鏡花
「中央公論 第五十二年第十三號」1937(昭和12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,054 字 · 90 页
を見ない方には、お解りになりますまい。怪しからん事であります。
「何にしましても病気が病気だもんですから、あせりにあせり抜いて、気ばかり荒くなりましてね、傍を困らせ抜きますうちにも、あの病気に限って、食べものの難題ですの。ええ、一番困りましたのは毎日見ます新聞の料理案内と、それにラジオのご馳走の放送ですのよ。鴨、鳥はいいとして、山鳥、雉子、豚でも牛でも、野菜よし、魚よし、料理に手のかかったものを、見ると、聞くと、そのまんま、すぐ食わせろ、目の前へ並べろでもって、口が利けましただけになお不可ません、少しも堪忍をする気はなし、その場即座にって、間に合わないと、殺すか、ほし殺せなんですもの……どんなに母を泣かせたでしょう、小父様。」……
私は吐胸をつきました。どんな意味でも、この場合の「おじさま。」は身に応えた。今度はこっちが赤面して汗になった。
「魔法でもつかわないじゃ、そんな事は出来ません。」
その際、秘伝書を手に入れようという、深き慮があるものなら、もっと辛抱をしたでしょう。せき心で、お母さんはと、初めて聞くと、少々加減が悪くって、というんです。川崎とすればもとよりの事、この家に居た処で、病気だといえば……と思うも遅い。