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ゆきやなぎ
雪柳
泉 鏡花
「中央公論 第五十二年第十三號」1937(昭和12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,054 字 · 90 页
今はこれまで、暇をくれよう、どんな夫を持とうとも、そうなれば仔細はないと、穏厚人、出方がまことにおとなしい。……もっとも、
そちがこの家へ来たそのはじめ、わずか年さえ二七の春よ、思いまわせば七年以来……
というのです。二七の春――私はまた……曳船で見た、お冬さんのそのころの年を思った、十五六――
いえばおとせは顔赤らめて、何もいわずに恥し姿。五年六年、年つき日ごろ、かわい、かわいと、撫でさするまで、情わすれた不義いたずらを、ぶつか叩くか、しもしょうことを、すいた男を添わせてやろと、かかる実意な夫をすてる、冥利すぎます、もったいなさに、天の冥加も、いと可恐しい。せめて夫へ言訳のため、死んでおわびは草葉の蔭と、雨に出て行く夜空の涙……
それから屋敷町の暗夜へ忍んだ、勿論、小禄らしい。約束の礫を当てると、男が切戸から引込んで、すぐ膝に抱く、泣伏す場面で、
そなた一人をあの世へやろか、二人ならでは死なせはしない、何の浮世はただ仮の宿、どうで一度は死なねばならぬ、死んで未来で添遂げようと、いえば嬉しやなおさら涙。さらば最期とかねての用意、女肌には緋の帷巾に、上は単衣の藍紺縞よ、当世はやりの……