轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きりのばんしゃ

霧の蕃社

中村 地平

「文学界」1939(昭和14)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,389 字 · 57 页

青空文庫

新しい妻はけだもののように逞しく、生き生きした体と、決して内地人に劣らない容貌とをもっている。その上、勢力家の頭目を義兄にもったため、土地の蕃人たちを禦してゆくにも好都合である。

「あなた、大変よ。ホウゴウ社の蕃人たちが内地人の首切るとさわいでいるよ」

近藤巡査が警察分署で執務していると、妻のテワスが顔色を変えてとびこんできたことがあった。近藤巡査はただちに同僚とホウゴウ社に駈けつけてみた。するとそこでは平素から不逞の志をいだいていた壮丁たちが、密かに銃器の手入れや竹槍の用意やをしている。近藤巡査とその同僚たちとは直ちに彼らをひっ捕えた。不穏な計画は事前に防止することができたのである。このようにして、妻の密告によって、近藤巡査が手柄をたてたのも一再にとどまらなかった。

内地や、そこに住まっている老父母やは、近藤巡査には遠い、記憶のかすれた想い出でしかなかった。献身的な妻と、柔媚な山々の眺めと、充ち足りた生活に巡査は没入しきっていた。

しかしこの安らかで、仕合わせな生活も永くはつづかなかった。近藤巡査が東海岸の花蓮港に転勤を命じられたことで、破綻を生じてしまったのである。