轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きりのばんしゃ

霧の蕃社

中村 地平

「文学界」1939(昭和14)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,389 字 · 57 页

青空文庫

一郎には、花岡二郎と呼ばれる弟がある。兄と同じように幼い頃から内地人に可愛がられており、また、蕃人にしては珍らしく高等小学校も終えている。官吏になりたい志望で、その頃は普通文官試験の受験準備中であった。

運動会の当日、同族の暴挙をおしとめようとして力の及ばなかった一郎は、弟二郎を誘うと蕃装のまま、血なまぐさい霧社公学校を捨てた。飄然としてホウゴウ社にむかったのである。あとに従うものは一郎二郎の妻子を始め、一族約二十余名があった。しかし、ホウゴウ社でもまた彼らは決して安らかな思いに落ちつくことはできなかった。まだ血糊の乾かない蕃刀を提げて退却する同族の姿を眼の辺りに眺めなければならなかったし、また砲弾の音が山々に鳴りわたり、立ち樹をゆすぶるのも聞かなければならなかった。内地人の実力を知りぬいている一郎には、これに挑闘する同族の運命が暗澹とした、悲哀なものに見えた。また、同族の犠牲となった恩愛ある内地人を想うと、傷心に耐え得ないものがあった。しかも自分自身はと言えば、そのどちらの側からも敵視されているにちがいないのである。

一郎は弟に懊悩の顔をふりむけて言った。