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かぜ
風
壺井 栄
「文芸」1954(昭和29)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,702 字 · 78 页
いつも小菊と一しょに寝ていたからである。ところが、取りだしてみると、ふとんも新しいものだった。更紗の花模様の一組で、同じ布の座ぶとんと枕まで入っている。枕のかさばりとならべて、かたいふろしき包みが出てきた。あけると、そうめんと煮干だった。ふとんとふとんのあいだからは、水色の、やっぱり新しい木綿蚊帳も出てきた。
――むりして、ふとん頼母子をおとしたにちがいない。きっとそうだ。客ぶとんを作りたいといっていた母の、それが唯一の希望だったのに……。
茂緒は更紗の花に顔をうずめて泣いた。泣きながら、修造のところへは、まだ手紙の返事さえもこないことを思い、修造が帰ってきても、手ばなしでは喜べない辛さをも感じていた。二人二様の母の心が、からっぽの行李と花模様のふとんになって、一つの押入れの上と下とにおさまった。上の段はふとんで、下の段は行李だ。茂緒は自分の番外行李をも手早く紐をとき、ふだん着だけ取りだして下の段に仲間入りさせようと思った。仕事さがしに出かけている修造の帰らぬまに、片づけておきたかったのだ。しかし行李の中はふとんとはちがって、なつかしさを掻きたてるものばかりだった。