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かぜ
風
壺井 栄
「文芸」1954(昭和29)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,702 字 · 78 页
茂緒は茂緒で、田舎にいて、修造たちの動きを理想化して考えていたことを思い、もどかしいのだった。
「働いてるじゃないか。」
修造は、わざと心外な顔をする。
「あんたじゃないわ。あの人たちよ。リャク、リャクって、自慢みたいにいってる人たちよ。」
「あの連中はあの連中さ。資本家に搾取されるのはごめんだというんだろ。」
「へえ、そして女は搾取してもいいの。」
「…………」
「みんな、横着な顔にみえるわ。Nさんだって、Iさんだって、女だけにいやな仕事さして、いばってるの。」
「うるさいな。」
ここまでくると、修造までもそうなのかと、茂緒はがっかりした。彼女自身は夫の仲間が集まって、けんけんごうごうの論に夜を明かそうとも口出しはせず、その人たちののどをうるおす茶くみ役に不満ではなかった。だが仲間の扶佐子や多枝が、女であるために受けている不当な侮辱や軽視には憤りを感じ、それをだれにもいえぬもどかしさで、修造にきくしかなかった。美しい未来のために、人間の自由のために、彼らの運動はあるのではないのかと、素朴に考え、その反逆精神に疑問をもった。しかもそこは茂緒の目には孤立した小さな世界にみえ、田舎の村の郵便局や役場で、いろんなことを訴えてくる人たちのためにはからい、手紙の代筆をしている方がりっぱだとさえ思った。